「事故が少ない街」は安全とは限らない——全国の交通事故を件数と死者で並べたら、順位がほぼ入れ替わった

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安全交通事故データの読み物

引っ越し先を選ぶとき、「交通事故が少ない街」を安全の目安にすることがあります。でも、事故の「件数」と、事故で人が「亡くなる」ことは、同じではありません。この記事では、全国の交通事故を人身事故の件数死者数の2つの物差しで並べ(警察庁・令和6年、人口10万人あたりに換算)、その関係を読み解きます。第1弾からのデータの読み物と同じく、順位そのものより、数字が何を語り、何を語らないかを確かめる回です。

人身事故が多い県、少ない県

まず件数から。全国の人身事故は令和6年で29万895件、人口10万人あたり230.6件です。都道府県別(10万人あたり)で並べると、こうなります。

人身事故(10万人あたり)
多い 静岡県 480件 / 群馬県 467件 / 福岡県 360件
少ない 秋田県 102件 / 島根県 103件 / 鳥取県 112件

最多の静岡と最少の秋田では、約4.7倍の開きがあります。ざっくり言えば、車も人も多い都市部で件数が多く、地方で少ない傾向。ただし後で触れるように、この件数は交通量に大きく左右されるので、「事故率が高い=道路が危険」と単純には読めません。

でも「死者」で並べ替えると、順位が入れ替わる

ここが今回いちばんの勘どころです。同じ交通事故を、今度は死者数(人口10万人あたり)で並べ替えてみます。

死者(10万人あたり)
多い 徳島県 4.59人 / 愛媛県 3.9人 / 山口県 3.8人
少ない 東京都 1.04人 / 神奈川県 1.18人 / 島根県 1.34人

顔ぶれが、件数のときとほぼ総入れ替えになりました。実際、件数の順位と死者数の順位の相関はほとんどありません(順位相関はおよそ−0.16=ほぼ無関係)。象徴的な例を挙げます。

  • 秋田県は人身事故の件数が全国で最も少ないのに、死者数(10万人あたり)は多いほうから12番目
  • 和歌山県も件数は少ないほう(8番目に少ない)ですが、死者数は多いほうから4番目
  • 逆に大阪府は件数が多いほう(8番目に多い)でも、死者数は少ないほうから4番目。東京都は死者数が全国で最少です。

つまり、「事故が少ない県」が「死亡事故は多い県」だったりする。都市部は事故は多くても軽微なものが中心で、地方は事故の件数こそ少なくても、いざ起きると亡くなりやすい——件数の少なさは、そのまま安全を意味しないのです。地方で死亡に至りやすい背景には、速度の出やすい道路、救急が到着するまでの時間、高齢の運転者や歩行者の多さなどが指摘されています。

この数字が語らないもの

ここがいつもいちばん大事なところです。交通事故の数字は安全の手がかりですが、次のこととは別物です。

  • 件数は交通量・通勤流入に左右されます。人口10万人あたりに直しても、その県で働く・通り抜ける車の量までは補正できません。件数が多い県=運転が荒い・道路が危険、とは言えません。
  • 「少ない=安全」ではありません。件数が少なくても死亡率が高い県があります。安全を見るなら、件数と死者の両方を見る必要があります。
  • 物損事故は含みません。ここでの件数は人身事故(人がケガ・死亡した事故)だけで、ぶつけただけの事故は入っていません。
  • 死者数は年ごとの振れが大きい。もともとの数が少ないため、1年だけの数字は上下しやすく、単年の順位を過度に読まないほうが安全です。
  • 県単位の目安です。同じ県でも市街地と山間部では事情がまったく違います。実際の危険は、通る道路や時間帯で大きく変わります。

machiscopeで見る

同じデータを、次の形でそのまま確認できます。

  • 交通事故が少ない都道府県ランキング:人身事故の件数(10万人あたり)で並べた一覧。※この記事のとおり、件数だけでは安全は測れない点にご注意を。
  • 全国マップ:交通事故(10万人あたり)を実際の県境で塗り分け。
  • 各都道府県ページでは、交通事故を県の参考値として掲載しています(例:件数が最少でも死者は多めの秋田県、死者数が最多の徳島県、死者数が最少の東京都)。

まとめ

  • 全国の人身事故は令和6年で29万895件(10万人あたり230.6件)。件数は静岡が最多・秋田が最少で約4.7倍の差。
  • しかし死者数(10万人あたり)で並べ替えると顔ぶれはほぼ総入れ替え(順位相関はほぼゼロ)。徳島が最多、東京が最少。
  • 「事故が少ない=安全」ではない。秋田は件数最少でも死者数は多いほうから12番目、和歌山は件数少なめでも死者数は4番目。都市は事故が多くても軽微、地方は少なくても死亡に至りやすい。
  • 件数は交通量に左右され、物損は含まず、死者数は年ごとの振れも大きい。件数と死者の両方を、一つの目安として読む。

出典:警察庁「交通事故統計(令和6年・本票=人身事故の全国悉皆データ)」。人口10万人あたりへの換算は総務省2020年国勢調査人口を用いてmachiscopeが算出。物損事故は含みません。件数は交通量・通勤流入・道路構成に左右されるため、都道府県単位の目安です。指標の粒度・ライセンスはデータ出典・方法論に記載しています。数値は参考情報であり、正確性・完全性を保証するものではありません。