「空き家率が高い街」は衰退した街ではない——全国でいちばん空き家が多いのは軽井沢、という話
「空き家率が高い街は、寂れていて危ない」——そんなイメージを持っていないでしょうか。でも、全国の空き家率を並べてみると、上位に来るのは意外な顔ぶれでした。この記事では、市区町村別の空き家率(総務省・住宅土地統計=空き家数÷総住宅数、令和5年)を全国で並べ、「空き家が多い」が何を意味するのかを読み解きます。第1弾からのデータの読み物と同じく、順位そのものより、数字が何を語り、何を語らないかを確かめる回です。
全国でいちばん空き家が多いのは、軽井沢
まず、空き家率が高い市区町村の上位を見てみます(集計できた1,142市区町村より)。
| 市区町村 | 空き家率 |
|---|---|
| 長野県軽井沢町 | 70.4% |
| 栃木県那須町 | 61.7% |
| 静岡県熱海市 | 53.4% |
| 山梨県北杜市 | 46.1% |
| 和歌山県白浜町 | 43.2% |
| 神奈川県箱根町 | 42.8% |
並んだのは、軽井沢・那須・熱海・箱根・白浜——いずれも全国有数の別荘地・リゾート地です。軽井沢にいたっては、住宅の7割が空き家という計算になります。これらの街が「衰退している」わけではないことは、名前を見れば明らかでしょう。
なぜこうなるのか。答えは空き家の中身にあります。
「空き家」の大半は、放置された家ではない
空き家統計でいう「空き家」には、実は次の4種類が混ざっています。
- 賃貸用の空き家:入居者を募集中の賃貸住宅
- 売却用の空き家:売り出し中の家
- 二次的住宅:別荘や、たまに寝泊まりする家
- その他の空き家:使われず放置され、管理もされていない家
私たちが「空き家問題」と聞いて思い浮かべる、朽ちて放置された家は、このうち「その他の空き家」だけです。軽井沢や那須の高い空き家率は、そのほとんどが別荘(二次的住宅)。人が住んでいない時間が長いだけで、きちんと所有・管理されている家です。「空き家率が高い=放置された家が多い=危ない街」ではない、ということです。
数字でも確かめられます。全国の空き家率は令和5年で13.8%と過去最高でしたが、このうち放置された「その他の空き家」は5.9%。全体の半分以下です。ニュースの見出しになる「空き家率13.8%」の多くは、賃貸市場に出ている家や別荘であって、問題視される放置空き家はその一部なのです。
逆に、空き家率が低いのは伸びている郊外
反対に、空き家率が低い市区町村を見ると、傾向が逆になります。最も低いのは秋田県美郷町(3.6%)ですが、宮城県富谷市(4.6%)・埼玉県志木市(5.2%)・埼玉県八潮市(5.3%)など、大都市近郊で人口が伸びている街が並びます。住宅への需要が強く、建てればすぐ埋まる街は、空き家率が低く出ます。
つまり空き家率は、「衰退の度合い」というより、その街の住宅がどう使われているかを映す指標です。別荘地なら高く、需要の強い郊外なら低い。高い・低いをそのまま良し悪しに置き換えることはできません。
この数字が語らないもの
ここがいつもいちばん大事なところです。空き家率は住宅事情の手がかりですが、次のこととは別物です。
- 「空き家」の中身は一様ではありません。賃貸募集中・売却用・別荘・放置が混ざっており、率の高さがそのまま「放置された家の多さ」を意味しません。本当に問題なのは「その他の空き家」で、全国では5.9%です。
- 高い=衰退、ではありません。別荘地・観光地は二次的住宅が多く、空き家率が高く出ます。人気の裏返しであることも多い。
- 低い=安泰、でもありません。賃貸募集中の空室も空き家に数えるので、賃貸が活発な街でも一定の空き家率は出ます。
- 一部の市区町村だけの数字です。住宅土地統計は標本調査で、今回集計できたのは全国1,741のうち1,142市区町村。小さな自治体の値は公表されていないことがあります。
- 数年ごとの推計です。ここに載せたのは令和5年の値で、5年ごとの調査にもとづく推計です。
machiscopeで見る
同じデータを、次の形でそのまま確認できます。
- 空き家率が低い街ランキング:全国の市区町村を空き家率の低い順で並べた一覧。
- 各市区町村のカルテでは、空き家率を住宅の参考値として掲載しています(例:住宅の7割が空き家の別荘地長野県軽井沢町・温泉リゾートの静岡県熱海市・空き家率が低い郊外の宮城県富谷市)。
まとめ
- 空き家率が全国で最も高いのは軽井沢(70.4%)で、那須・熱海・箱根・白浜と別荘地・リゾート地が上位を占める。衰退ではなく、別荘(二次的住宅)が多いため。
- 空き家統計には賃貸募集中・売却用・別荘・放置が混ざる。本当に問題の「その他の空き家」は全国で5.9%(総空き家率13.8%の半分以下)。
- 空き家率が低いのは人口が伸びる大都市近郊(富谷・志木・八潮など)。空き家率は衰退度ではなく「住宅がどう使われているか」を映す。
- 高い・低いをそのまま良し悪しにせず、中身(別荘か、放置か、賃貸募集中か)を踏まえて、一つの目安として読む。
出典:総務省「住宅・土地統計調査(令和5年)」より、空き家数÷総住宅数を市区町村別に算出(machiscope)。全国の空き家率13.8%・「その他の空き家」5.9%は同調査の公表値。住宅土地統計は標本調査のため、値のない市区町村があります(今回の集計対象は1,142市区町村)。指標の粒度・ライセンスはデータ出典・方法論に記載しています。数値は参考情報であり、正確性・完全性を保証するものではありません。