市の高齢化率は、あなたが住む地区の数字ではない——同じ市の中で0.9%と57.2%、市内の開きは中央値32ポイント

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人口高齢化率町丁目データの読み物

街の統計は、たいてい市区町村の単位で語られます。machiscopeのカルテもそうですし、ニュースで見る「高齢化率」も「持ち家率」も市区町村の値です。では、その平均はどのくらい「そこに住む実感」と一致するのでしょうか。この記事では、国勢調査の小地域集計(町丁・字=町名や丁目の単位)を使い、全国1,731市区町村・73,505地区を並べて、市の平均の中身がどれだけ割れているかを確かめます。第1弾からのデータの読み物と同じく、順位そのものより、数字が何を語り、何を語らないかを確かめる回です。

同じ市の中に、0.9%の地区と57.2%の地区がある

例として、千葉県印西市を見てみます。市全体の高齢化率は23.1%。全国の市区町村の中央値(34.6%)よりだいぶ低く、統計のうえでは「若い市」です。

ところが、市の中を地区別に見ると、こうなります。

地区 高齢化率 人口
東の原一丁目 0.9% 1,182人
木刈四丁目 57.2% 894人

同じ市の中で、56ポイント開いています。片方は1,182人のうち65歳以上が11人しかいない。もう片方は住民の5人に3人が65歳以上です。「印西市は23.1%」という数字は、このどちらの街の姿とも一致しません。

これは例外ではなく、ほとんどの市がそうなっている

比較できる地区が10以上ある921市区町村について、市内でいちばん高い地区といちばん低い地区の差を測りました。

  • 開きの中央値は32.4ポイント
  • 20ポイント以上開くのが819市区町村=88.9%
  • 30ポイント以上開くのが542市区町村=58.8%

つまり、9割近い市区町村で、中身は20ポイント以上に割れています。市の平均はその真ん中を通る線であって、市内のどこかの街を指しているわけではない、ということです。

大都市も同じです。開きが大きい順に何例か挙げます。

市区町村 市の高齢化率 最も低い地区 最も高い地区 開き
兵庫県猪名川町 31.7% つつじが丘五丁目 4.4% 伏見台一丁目 75.7% 71.3pt
広島県呉市 35.3% 郷原野路の里一丁目 6.0% 豊町大長 71.6% 65.6pt
千葉県四街道市 28.9% もねの里四丁目 2.4% 千代田二丁目 61.1% 58.8pt
東京都練馬区 21.2% 平和台三丁目 12.0% 光が丘二丁目 35.9% 23.9pt

猪名川町は町全体では31.7%ですが、町内に4.4%の住宅地と75.7%の住宅地が同居しています。

なぜここまで割れるのか

大きな理由の一つは、住宅地が一斉につくられ、一斉に入居されることです。同じ年に同じような世代が入居した団地や分譲地は、その後住民がそろって歳をとります。入居から40年経てば、当時30代だった人はまとめて70代になる。子どもが独立して出ていけば、残るのは高齢の世帯だけになります。

一方、同じ市の中では新しい宅地の開発も進みます。去年できた分譲地には、これから子どもを育てる世代がまとめて入る。だから同じ市の中に、入居して40年の街と、入居して2年の街が並ぶことになります。市の平均は両者を足して割った値で、どちらの街の姿でもありません。

「高齢化率94.7%の地区」の正体

ここは、データを扱ううえで大事なところです。地区のデータをそのまま並べると、高齢化率が9割を超える地区が出てきます。最も高いのは広島県三次市の山家町で、94.7%

しかし同じレコードの世帯数を見ると、人口562人に対して一般世帯は25世帯しかありません。1世帯あたり22.5人という計算になります。全国の地区の中央値は1世帯あたり2.42人ですから、これは住宅地の数字ではありません。老人ホームなどの施設が、その地区の人口の大半を占めているということです。国勢調査は施設の入所者をまとめて「施設等の世帯」として数えるため、こうした地区は極端な値になります。

実際に調べると、高齢化率が60%を超える地区117件のうち、1世帯あたり3.5人を超えるものが67件ありました。割合にして57%高齢化率が高い地区の半分以上は、住宅地ではなく施設だったということです。この記事の集計は、そうした地区をあらかじめ除いています。

高齢化率だけの話ではない

同じやり方で他の指標も測ると、市内の開きはむしろもっと大きくなります。

指標 市内の開き(中央値)
持ち家率 62.4pt
戸建率 68.8pt
子育て世帯率 26.9pt
高齢化率 32.4pt

持ち家率は市内で60ポイント以上開くのがふつうです。駅前の賃貸マンションが並ぶ地区と、郊外の一戸建てが並ぶ地区が、同じ市の同じ平均値に押し込められています。「この市は持ち家率◯%」という数字が、市内のどの街の実態も表していない場合がある、ということです。

この数字が語らないもの

ここがいつもいちばん大事なところです。今回の集計には、はっきりした制約があります。

  • 各市区町村につき、人口が多い上位60地区までしか収録していません。札幌市は5,434地区のうち60地区(1.1%)です。したがってここでの「最も高い地区・最も低い地区」はその60地区の中での話であり、市内で本当の最高・最低とは限りません。実際の開きは、ここに出した値より大きい可能性が高いと考えてください。
  • 人口500人以上の地区に限っています。小さな地区は数人の増減で率が大きく動くためです。
  • 施設を除く線引きは目安です。1世帯あたり3.5人という基準で除いていますが、絶対の正解があるわけではありません。多世代同居の多い地区が巻き込まれている可能性はあります。
  • 2020年の断面です。国勢調査の小地域集計にもとづく値で、その後の開発や住み替えは反映されていません。
  • 町丁・字の境界は生活圏ではありません。丁目が違えば道路一本で数字が変わることもあり、地区の値がそのまま「そこでの暮らし」を決めるわけではありません。
  • 地区の数字に良い・悪いはありません。高齢化率が高い地区は、長く住み続けられている街でもあります。

machiscopeで見る

同じデータを、次の形でそのまま確認できます。

まとめ

  • 全国1,731市区町村・73,505地区を町丁・字まで下りて並べると、市内の高齢化率の開きは中央値32.4ポイント。20ポイント以上開く市区町村が88.9%にのぼる
  • 千葉県印西市は市全体で23.1%だが、市内には0.9%の地区と57.2%の地区がある。最大は兵庫県猪名川町の71.3ポイント
  • 理由は、一斉に入居した住宅地が一斉に歳をとること。同じ市に「入居40年の街」と「入居2年の街」が同居する。
  • 高齢化率が60%を超える地区の57%は施設(1世帯あたり3.5人超)で、住宅地ではない。地区データはそのまま読むと誤る。
  • 開きは持ち家率で62.4pt、戸建率で68.8ptとさらに大きい。市の平均は市内のどの街の姿でもない——一つの目安として読む。

出典:総務省統計局「2020年国勢調査 小地域集計」(e-Stat 統計GIS)より、町丁・字単位の年齢別人口・世帯の家族類型・住宅の所有関係・建て方を集計(machiscope)。市区町村単位の高齢化率は総務省「社会・人口統計体系」(65歳以上人口÷総人口・2020年)。小地域集計は各市区町村につき人口上位60地区までを収録しており、市内の最大・最小はその範囲内での値です。統計上の秘匿により一部の地区・項目に値がない場合があります。指標の粒度・ライセンスはデータ出典・方法論に記載しています。数値は参考情報であり、正確性・完全性を保証するものではありません。