「バス停の数」は、バスの便利さも、バスの有無も教えてくれない——駅がない485市区町村を数えてみた話

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交通バスデータの読み物

以前の回で、全国485市区町村(28%)に鉄道駅がないというデータを紹介しました。そのとき自然に出てくる次の問いが、「では、そこではバスはどうなっているのか」です。この記事では、国土数値情報のバス停留所データ(P11・2022年度)を使って、駅のない街のバスを数えます。結論を先に言うと、数えることはできましたが、いちばん知りたいことは分かりませんでした。第1弾からのデータの読み物と同じく、順位そのものより、数字が何を語り、何を語らないかを確かめる回です。

駅がない街のバス停は、中央値36か所

まず数えた結果です。鉄道駅がない485市区町村のバス停留所の数は、中央値36か所。4分の1の街は18か所以下、上位4分の1は81か所以上でした。最も多い街を並べるとこうなります。

市区町村 バス停留所 人口
大分県国東市 595 26,232人
兵庫県宍粟市 562 34,819人
広島県北広島町 540 17,763人
鹿児島県鹿屋市 490 101,096人
熊本県天草市 486 75,783人
新潟県佐渡市 412 51,492人

人口2万6千人の国東市に、バス停が595か所。数だけ見れば、都市部の鉄道駅の密度をはるかに超えています。駅がない=公共交通がない、ではないことは、これではっきりします。

でも、ここから先に進めません。理由が2つあります。

理由1:この数字には、運行本数が入っていない

このデータが持っているのは、停留所がどこにあるかだけです。そこに1日何本のバスが来るかは含まれていません

つまり、1日に2本しか来ない停留所も、1日に60本来る停留所も、同じ「1か所」として数えられます。国東市の595という数字は、路線網が細かく張られていることは示しますが、そのバスに乗って通勤・通院ができるかどうかは何も示しません。むしろ、便数の少ない路線が広い面積に散らばるほど、停留所の数は増えます。「バス停が多い街=バスが便利な街」と読むと、事実と逆になることさえあります。

これは順位のつけようがない、というのが正直なところです。だからmachiscopeでは、バス停留所の数をランキングにしていません。

理由2:「0」を「バスがない」と読めない

もう一つは、もっと厄介です。全国1,741市区町村のうち、このデータでバス停留所が0件と出るのは94市区町村あります。

しかし、その中身を人口の多い順に見ると、こうなります。

市区町村 人口 鉄道駅
愛知県幸田町 42,449人 3
宮城県柴田町 38,271人 3
宮城県亘理町 33,087人 3
栃木県矢板市 31,165人 2

人口4万人を超える町のバス停が、1か所もない。これを実態として受け取るのは無理があります。人口1万人以上でバス停0と出る自治体が17ありました。この「0」は「無い」ではなく「このデータに収録されていない」と読むしかありません

そこでmachiscopeでは、この0を「バスがない」とは表示していません。カルテには「本データにこの市区町村のバス停留所は収録されていません(2022年度時点)。コミュニティバスやデマンド交通が別途ある場合があります」と出しています。0を実態として断定しない、というのは、このサイトでくり返し立てている原則です。

なお、駅もバス停も0と出るのは40市区町村ですが、いずれも人口9,382人以下の町村です。先ほどの人口4万人規模の町のように「明らかにおかしい」とは言い切れない一方で、収録漏れではないと確かめる手立てもありません

デマンド交通の欄は、全国で0件

もう一つ、この統計の性格がよく分かる点があります。バス停留所データには区分があり、路線バス(民間)・路線バス(公営)・デマンドバス・コミュニティバス・その他に分かれています。

ところが、全国278,409か所のバス停留所のうち、デマンドバスに分類されたものは1か所もありません。区分そのものは用意されているのに、実際には1件も登録されていない、ということです。

デマンド型の乗合交通は、路線バスの維持が難しい地域で実際に広がっている仕組みです。それがこの統計にはまったく現れない。統計に区分があることと、その区分でものが数えられていることは別だ、というのがよく分かる例だと思います。

それでも、見えることはある

数えられた範囲で、はっきり見えることもあります。全国のバス停留所278,409か所の内訳です。

区分 停留所 割合
路線バス(民間) 171,042 61.4%
コミュニティバス 92,176 33.1%
路線バス(公営) 15,181 5.5%
その他 337 0.1%
デマンドバス 0 0.0%

(1か所の停留所に複数の区分がつくことがあるため、内訳の合計278,736は総数を327だけ上回ります。割合は総数278,409に対する値です。)

3か所に1か所が、自治体などが運営するコミュニティバスです。さらに、バス停が10か所以上ある自治体のうち506市区町村では、コミュニティバスが停留所の過半を占めていました。民間の路線バスだけでは足が保てない地域で、自治体が自ら車を走らせている——その広がりは、停留所の数からでも読み取れます。

この数字が語らないもの

ここがいつもいちばん大事なところです。

  • 運行本数・時刻は含まれません。停留所の数は、便利さの指標ではありません。1日数本の路線も1か所として数えます。
  • 0は「無い」ではありません。人口4万人規模の町が0と出ています。収録の範囲によるもので、実際のバスの有無を示しません。
  • 2022年度時点です。路線の廃止・新設は毎年あります。とくに地方のバス路線は縮小が続いており、この数字はすでに過去のものです。
  • 停留所の位置は、行きたい場所を教えません。数が多くても、病院やスーパーに行く便がなければ生活の足になりません。
  • 区分は自己申告に近いものです。コミュニティバスと路線バスの線引きは運行形態によって曖昧で、デマンド交通のように区分があっても使われないこともあります。
  • 鉄道駅の有無と組み合わせても、移動しやすさは測れません。自家用車が前提の地域では、そもそも公共交通の密度が生活の質を決めません。

machiscopeで見る

同じデータを、次の形でそのまま確認できます。

  • 各市区町村のカルテの交通の欄に、バス停留所の数と事業者の内訳を載せています(例:駅がなくバス停595か所の大分県国東市兵庫県宍粟市新潟県佐渡市、データに収録がない愛知県幸田町)。
  • 停留所の数はランキングにしていません。便利さを測れない数字で順位をつけないためです。

まとめ

  • 鉄道駅がない485市区町村のバス停留所は中央値36か所、最多は大分県国東市の595か所。駅がない=公共交通がない、ではない。
  • ただしこのデータに運行本数は含まれません。1日2本の停留所も1日60本の停留所も同じ1か所で、便利さの指標にはなりません
  • バス停0と出る94市区町村には人口4万人超の町が含まれる。この0は「無い」ではなく「収録されていない」。
  • デマンドバスの区分は全国で0件。区分があることと、数えられていることは別。
  • 見えるのは内訳で、コミュニティバスが全国の33.1%、506市区町村では過半を占める。一つの目安として読む。

出典:国土数値情報「バス停留所データ P11-22」「鉄道データ N02」「行政区域データ N03」(国土交通省)より、市区町村別に停留所数と区分別内訳を集計(machiscope)。人口は総務省「令和2年国勢調査」(e-Stat 社会・人口統計体系)。バス停留所データには運行本数・時刻は含まれず、停留所数は利便性を示すものではありません。また収録範囲の都合により、実際にはバスが運行していても停留所が収録されていない市区町村があります。指標の粒度・ライセンスはデータ出典・方法論に記載しています。数値は参考情報であり、正確性・完全性を保証するものではありません。