「駅徒歩◯分」では探せない街——全国485市区町村(28%)に鉄道駅がない、という話
家を探すとき、多くの人が「駅徒歩◯分」を最初の条件にします。でも、その物差しがそもそも使えない街が、全国にはたくさんあります。この記事では、全国の鉄道駅(国土数値情報)とバス停のデータを市区町村ごとに並べ、「駅で街を測る」ことの前提を確かめます。第1弾からのデータの読み物と同じく、数字が語ることと語らないことの両方を読む回です。
全国の28%、485市区町村に駅がない
まず事実から。全国1,741市区町村のうち、鉄道駅が一つもないのは485市区町村。割合にして約28%、およそ4分の1以上の自治体には駅がありません。「駅徒歩◯分」という探し方は、この4分の1の街では最初から成り立たない、ということです。
駅のない街は、地方に偏っています。都道府県別に数えると、北海道89・沖縄39・鹿児島29・長野24・熊本21と続きます。反対に、全市区町村に駅がある県は、全国で富山県ただ一つでした(県庁所在地の富山市には74もの駅があり、鉄道網が県内に張りめぐらされています)。同じ日本でも、鉄道が生活の足になっている地域と、そうでない地域の差は大きい。
「駅がない=田舎の小さな町」ではない
ここが今回いちばんの勘どころです。駅がないと聞くと、人口が少ない山間部や離島を思い浮かべがちですが、そうとは限りません。駅のない485市区町村を人口が多い順に並べると、上位はこうなります。
| 市区町村 | 人口 | 駅 |
|---|---|---|
| 沖縄県沖縄市 | 142,752人 | 0 |
| 沖縄県うるま市 | 125,303人 | 0 |
| 鹿児島県鹿屋市 | 101,096人 | 0 |
| 沖縄県宜野湾市 | 100,125人 | 0 |
| 茨城県神栖市 | 95,454人 | 0 |
| 神奈川県綾瀬市 | 83,913人 | 0 |
人口10万人前後の都市でも、駅がゼロの街はあります。とくに沖縄は象徴的で、沖縄県は41市町村のうち39までが駅ゼロ。鉄道駅があるのは、モノレール(ゆいレール)が走る那覇市と浦添市の2市だけです。沖縄では、鉄道ではなく車とバスが移動の主役になっている——「駅の有無」は人口や都会度ではなく、その地域の交通の成り立ちを映しているのです。
駅がなくても公共交通はある——ただし本数は別
「駅がない」は「公共交通がない」ではありません。駅のない485市区町村のうち、445(92%)にはバス停があります。鉄道の代わりに、路線バスやコミュニティバスが地域の足を担っているわけです。駅だけを見て「交通の空白地帯」と決めつけるのは早い。
ただし、逆方向の注意もあります。バス停の数は、便利さそのものではありません。1日に数本しか来ない路線も、1日に何十本も来る路線も、停留所としては同じ1つと数えられます。今回のバスのデータにも運行本数や時刻は含まれていません。停留所が多い=便利、少ない=使えない、とは読めない。同じ理由で、駅が「ある」街でも、1日数本の駅なら利便性は限られます。数の有無と、実際の使い勝手は別の話なのです。
この数字が語らないもの
ここがいつもいちばん大事なところです。駅やバス停の数は交通の一面ですが、次のこととは別物です。
- 駅の有無は、便利さの有無ではありません。車社会の地域では、駅がなくても生活は成り立ちます。逆に駅があっても、本数が少なければ日常の足にはなりにくい。
- バス停の数は運行本数を表しません。停留所が多くても1日数本のことがあり、少なくても頻発路線のことがあります。数だけでは「使えるか」は分かりません。
- 公共交通は減便・廃止が進んでいます。ここに載せたのは調査時点の断面で、路線の統廃合で状況は変わります。実際の便は最新の時刻表でご確認ください。
- 「駅の数」は使い勝手の順位ではありません。ターミナル駅が一つある街と、無人駅が多数ある街を、同じ物差しでは比べられません。
- 通勤・通学の実態はデータの外です。同じ「駅なし」でも、車で15分に隣町の駅がある街と、公共交通が細い街では、暮らしは大きく違います。
machiscopeで見る
同じデータを、次の形でそのまま確認できます。
- 路線・沿線から街を探す:鉄道の路線ごとに、沿線の駅と市区町村をたどれます。
- 各市区町村のカルテでは、鉄道駅とバス停の状況を交通の項目に掲載しています。駅のない街の例(沖縄県沖縄市・神奈川県綾瀬市)と、鉄道が密な街の例(富山県富山市)を見比べると、違いがはっきりします。
まとめ
- 全国1,741市区町村のうち485(約28%)には鉄道駅が一つもない。「駅徒歩◯分」で探せない街が4分の1以上ある。全市区町村に駅があるのは富山県だけ。
- 駅がない=田舎の小さな町、ではない。沖縄市(14万人)など人口10万人前後の都市にも駅ゼロがあり、沖縄は41市町村中39が駅なし(鉄道は那覇・浦添のゆいレールのみ)。
- 駅のない街でも92%にはバス停があり、公共交通はバスが担う。ただしバス停の数は運行本数=便利さを表さない。
- 駅やバス停の数の有無と、実際の使い勝手は別。車での移動も含め、街ごとの交通の成り立ちを踏まえて読む。
出典:国土数値情報「鉄道データ N02」(駅・行政区域データ N03で市区町村に集計)、および国土数値情報「バス停留所データ P11」(停留所)/国土交通省。市区町村別の集計・対比はmachiscopeによるもの。駅数・停留所数は交通量や運行本数を表さず、施設数の多寡は便利さの優劣を示すものではありません。公共交通は減便・廃止が進むため、実際の運行状況は最新の時刻表でご確認ください。指標の粒度・ライセンスはデータ出典・方法論に記載しています。数値は参考情報であり、正確性・完全性を保証するものではありません。