「人が集まる街」ほど良い、とは限らない——全国の転入超過を並べたら、76%の市区町村は人が減っていた
引っ越し先や移住先を選ぶとき、「人が集まっている街」を良い街の目安にすることがあります。でも、人が集まることと、その街が住みやすいことは、同じとは限りません。この記事では、全国の転入超過(転入者数−転出者数、総務省・令和6年〔2024〕・日本人移動者)を市区町村ごとに並べ、「人が集まる」が何を意味するのかを読み解きます。第1弾からのデータの読み物と同じく、順位そのものより、数字が何を語り、何を語らないかを確かめる回です。
人が集まっているのは、全体の2割だけ
まず全体像から。全国1,741市区町村のうち、転入が転出を上回った(人が増えた)のは402市区町村。残りの1,330市区町村(全体の約76%)は転出超過でした。むしろ転出のほうが多い、人を送り出す側の街です。
つまり、日本の4分の3以上の街では人が減っている。人が集まっているのは、ごく一部の街に偏っているのが実態です。「人が集まる街」は珍しいからこそ目立つのであって、平均的な街はむしろ人を送り出す側にいる、ということです。
実数の上位は「大都市」——数の大きさは規模の反映
では、人が集まっている街はどこか。転入超過の実数(人数)で並べると、上位はこうなります。
| 市区町村 | 転入超過(2024年) |
|---|---|
| 大阪府大阪市 | +17,626人 |
| 北海道札幌市 | +10,743人 |
| 福岡県福岡市 | +10,705人 |
| 愛知県名古屋市 | +9,216人 |
| 神奈川県横浜市 | +8,618人 |
| 東京都中央区 | +7,489人 |
顔ぶれは、大阪・札幌・福岡・名古屋・横浜——地方の中枢を含む大都市です。ここには2つの力が働いています。ひとつは規模。人口が多い街は、動く人の数も多いので、実数が大きく出やすい。もうひとつは都心回帰。とくに東京都中央区は、人口17万人ほどの区に7,489人が純増しており、タワーマンションの供給で都心に人が戻る動きが数字に表れています。実数の大きさは、その街の「良さ」ではなく、規模と開発を映していると読むのが自然です。
人口比で見ると、顔ぶれが変わる
同じ転入超過を、今度は人口千人あたりで並べ替えると、景色が一変します。
- 東京都中央区(44.3人/千人)
- 北海道南幌町(27.2人/千人)
- 沖縄県宜野座村(26.4人/千人)
- 熊本県西原村(21.2人/千人)
- 大阪府島本町(20.6人/千人)
大都市に混じって、南幌町・宜野座村・西原村・島本町といった小さな町村が上位に並びます。実数では埋もれる規模でも、人口に対する増え方でみれば、大都市に引けを取らない街がある。宅地開発が進む郊外や、独自の移住策で人を集める町などが、ここに顔を出します。「実数で多い街」と「勢いよく増えている街」は別——どちらの物差しで見るかで、答えは変わります。
この数字が語らないもの
ここがいつもいちばん大事なところです。転入超過は街の動きの手がかりですが、次のこととは別物です。
- 集まる=住みやすい、ではありません。転入超過には、進学・就職・転勤といった一時的な移動も含まれます。学生が入学で入り卒業で出ていく街は毎年転入超過になりますが、それは「定着」とは違います。
- 実数と人口比は別の街を指します。実数は大都市、人口比は小さな成長の町。安全や暮らしやすさを測るなら、規模の影響を除いた人口比で見るほうが実態に近いこともあります。
- 単年の数字は振れます。大型マンションが竣工した年だけ大きく跳ねる、といったことが起こります。1年の順位で街の勢いを断じないほうが安全です。
- 日本人の移動だけです。この統計は日本人移動者が対象で、近年増えている外国人住民の転入は含みません。実際の人口の増減とはずれることがあります。
- なぜ増減したかは語りません。数字は「何人増えたか」を示すだけで、仕事・住宅・進学・災害など理由までは教えてくれません。
machiscopeで見る
同じデータを、次の形でそのまま確認できます。
- 転入超過が多い街ランキング:全国の市区町村を転入超過の実数で並べた一覧(実数なので大都市が上位に来る点にご注意を)。
- 各市区町村のカルテでは、転入超過を人口の参考値として掲載しています(例:タワマンで都心回帰の東京都中央区・実数トップの大阪府大阪市・県庁所在地でも転出超過の京都府京都市)。
まとめ
- 全国1,741市区町村のうち、人が増えた(転入超過)のは402だけ。残る約76%(1,330)は転出超過で、日本の4分の3以上の街は人が減っている。
- 転入超過の実数トップは大都市(大阪+17,626人など)。数の大きさは街の良さではなく、規模と都心回帰・開発を映す。
- 人口千人あたりで並べ替えると顔ぶれは一変(中央区44.3人、南幌・宜野座・西原など小さな町が上位)。実数で多い街と勢いよく増える街は別。
- 転入超過には進学・転勤など一時的な移動が混じり、日本人のみ・単年の振れも大きい。実数と人口比の両方を、一つの目安として読む。
出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」等に基づく社会・人口統計体系(令和6年〔2024〕・日本人移動者)より、転入者数−転出者数を市区町村別に算出(machiscope)。外国人住民の移動は含みません。人口千人あたりの換算は総務省の人口を用いています。指標の粒度・ライセンスはデータ出典・方法論に記載しています。数値は参考情報であり、正確性・完全性を保証するものではありません。