「平均所得が高い街」は住民みんなが豊かな街ではない——トップの港区1,781万円は"平均のからくり"、という話
「平均所得が高い街」と聞くと、豊かで暮らしやすい街を思い浮かべます。でも、その「平均」という数字には、少し注意が要ります。この記事では、市区町村別の納税者1人あたりの課税対象所得(総務省の統計・2024年)を全国で並べ、「所得が高い街」が何を意味するのかを読み解きます。第1弾からのデータの読み物と同じく、順位そのものより、数字が何を語り、何を語らないかを確かめる回です。
トップは港区、でも中央値とはかけ離れている
まず上位から。納税者1人あたりの課税対象所得で並べると、こうなります。
| 市区町村 | 1人あたり課税対象所得 |
|---|---|
| 東京都港区 | 1,781万円 |
| 東京都千代田区 | 1,176万円 |
| 東京都渋谷区 | 1,165万円 |
| 兵庫県芦屋市 | 887万円 |
| 東京都中央区 | 833万円 |
| 東京都目黒区 | 779万円 |
トップは東京都港区の1,781万円。以下、千代田・渋谷・中央・目黒といった東京都心と、関西屈指の高級住宅地兵庫県芦屋市が続きます。
ここで大事なのが、全国の中央値は318万円だということ。トップの港区は、その5倍以上です。最も低い自治体(青森県西目屋村の245万円など)と比べると、港区とは約7.3倍の開きがあります。上位はごく一部の都心・高級住宅地に極端に偏っていて、「平均的な街」の所得は300万円台。ランキングの上のほうだけを見て「所得の高い街はたくさんある」と思うと、実態を読み違えます。
「平均」は、一部の高所得者が引き上げる
もう一つ、この数字の性質を押さえておきましょう。ここでの所得は、その街の納税者の平均(合計を人数で割った値)です。平均は、少数の極端に高い人がいると大きく引き上げられます。
港区の1,781万円は、区民みんなが1,781万円稼いでいるという意味ではありません。ごく一部の非常に高い所得の人が全体の平均を押し上げた結果で、多くの住民の実感とはずれます。「平均所得が高い街=そこに住む人が等しく豊か」ではない、ということです。
同じ理由で、人口の少ない町が上位に紛れ込むこともあります。今回のデータでも、千葉県芝山町(661万円)や鹿児島県宇検村など、人口数千の小さな自治体が上位に顔を出します。分母となる納税者が少ないので、一部の高所得者や特定の事情で平均が跳ね上がりやすいのです。順位をそのまま「豊かさ」と読むのは危うい。
この数字が語らないもの
ここがいつもいちばん大事なところです。平均所得は暮らしを考える手がかりですが、次のこととは別物です。
- 「平均」であって「普通」ではありません。少数の高所得者が引き上げるので、中央値(まん中の人)や多くの住民の実感とはずれます。
- 納税者1人あたりです。所得割を課される納税者が分母で、専業主婦(夫)・学生・低所得で課税されない人などは含まれ方が異なります。世帯の家計そのものではありません。
- 生活コストと表裏です。所得が高い港区や渋谷は、家賃も物価も高い。手元に残る余裕(可処分)は、所得の順位とは一致しません。
- 小さな自治体は跳ねやすい。納税者が少ないと、一部の事情で平均が大きく動きます。人口規模の小さな上位は割り引いて見るのが安全です。
- 単年の断面です。ここに載せたのは2024年の課税対象所得ベースで、値は毎年更新されます。
machiscopeで見る
同じデータを、次の形でそのまま確認できます。
- 平均所得が高い街ランキング:全国の市区町村を納税者1人あたりの課税対象所得で並べた一覧。
- 各市区町村のカルテでは、平均所得を家計の参考値として掲載しています(例:全国トップの東京都港区・高級住宅地の兵庫県芦屋市・全国最少水準の青森県西目屋村)。
まとめ
- 納税者1人あたりの課税対象所得は、トップが東京都港区の1,781万円。以下も都心と芦屋など、ごく一部の都心・高級住宅地に偏る。全国の中央値は318万円で、最高と最低で約7.3倍の差。
- ここでの所得は平均なので、少数の高所得者が引き上げる。港区の1,781万円は住民みんなの額ではない。
- 納税者1人あたりの値で世帯家計とは別、しかも所得が高い街は生活コストも高い(手取りの豊かさとは別)。
- 人口の小さな上位は跳ねやすい。順位をそのまま豊かさと読まず、一つの目安として中身を踏まえて読む。
出典:総務省の課税対象所得・納税義務者数(社会・人口統計体系「統計でみる市区町村のすがた」・2024年)より、課税対象所得÷納税義務者数(所得割)を市区町村別に算出(machiscope)。専業主婦(夫)・学生など課税されない人の含まれ方は異なり、世帯の家計とは別の指標です。指標の粒度・ライセンスはデータ出典・方法論に記載しています。数値は参考情報であり、正確性・完全性を保証するものではありません。