大学は東京に集中し、進学率は1.9倍の差——「進学=上京」を全国データで読む
「大学進学率が高い県は、教育に熱心で恵まれている」——そう受け取ることがあります。でも、進学率の高低には、学力や熱心さだけでは説明できない事情が隠れています。この記事では、都道府県別の大学進学率と大学の数(文部科学省・令和6年度学校基本調査)を全国で並べ、「進学」という言葉が地方で何を意味するのかを読み解きます。第1弾からのデータの読み物と同じく、順位そのものより、数字が何を語り、何を語らないかを確かめる回です。
進学率は、東京72.9%から鹿児島38.4%まで
まず進学率から。ここでの進学率は、その県の高校を卒業した人のうち現役で大学へ進んだ割合(出身高校の所在地ベース)です。全国平均は58.3%。都道府県で並べると、こうなります。
| 都道府県 | 大学進学率 | |
|---|---|---|
| 高い | 東京都 72.9% / 京都府 70.8% / 神奈川県 67.2% | |
| 低い | 宮崎県 41.7% / 鹿児島県 38.4% |
最も高い東京都で72.9%、最も低い鹿児島県で38.4%。その差は34.5ポイント、倍率にして約1.9倍です。上位は東京・京都・神奈川・兵庫・大阪といった都市部、下位は南九州や地方が並びます。同じ高校卒業でも、住む県によって大学に進む割合はこれだけ変わる、ということです。
大学は、東京に一極集中している
なぜこれほど差がつくのか。手がかりは大学の数にあります。全国の大学は813校(国立86・公立103・私立624)。その分布は、進学率よりもさらに極端です。
- 東京都だけで145校——全国の約18%が東京に集中しています。
- 東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・京都・兵庫・愛知の三大都市圏8都府県で412校——全国の過半(50.7%)。
- 一方で、佐賀県・島根県は2校、鳥取県は3校しかありません。
大学は、人口や面積に比例して全国に散らばっているのではなく、大都市に偏って立地しています。地方には、そもそも通える大学がごくわずかしかない県が少なくないのです。
地方の高校生にとって、進学はしばしば「上京」
この2つを重ねると、地方の進学率が低く出る理由が見えてきます。大学が2〜3校しかない県では、大学に進むこと自体が、多くの場合「県外に出る」ことを意味します。下宿や仕送りの費用、家族と離れる負担——大学までの距離と経済的なハードルが、進学するかどうかの判断に重くのしかかります。
つまり進学率の地域差は、その県の高校生の学力や意欲の差というより、大学がどれだけ近くにあるか・進学にどれだけお金がかかるかの差を映している面が大きい。そして進学した若者の多くは都市部の大学へ流れ、そのまま都市で就職する——「進学=上京」という流れが、若者の地方からの流出につながっています。進学率という一つの数字の裏に、大学の一極集中と人口の偏りという構造が横たわっているのです。
この数字が語らないもの
ここがいつもいちばん大事なところです。進学率と大学数は教育を考える手がかりですが、次のこととは別物です。
- 進学率は学力の高さではありません。所得・大学までの距離・地域の進路の慣行(就職や専門学校を選ぶ割合)に左右されます。低い=教育レベルが低い、ではありません。
- 進学の「質」までは語りません。この数字はあくまで進学した割合で、どこの大学に、何を学びに進んだかは含みません。
- 大学の数は「本部の所在地」ベースです。都心に本部を置きつつ郊外にキャンパスを持つ大学もあり、実際に通えるキャンパスの分布とは少しずれます。
- 定義に注意が必要です。ここでの全国値58.3%は「現役・出身高校所在地別」で、報道でよく見る59.1%(過年度卒を含み18歳人口を分母にする別定義)とは計算方法が異なります。
- 単年の断面です。ここに載せたのは令和6年度の値で、毎年更新されます。
machiscopeで見る
同じデータを、次の形でそのまま確認できます。
- 大学進学率が高い都道府県ランキング:全国を大学進学率で並べた一覧。
- 全国マップ:大学進学率を実際の県境で塗り分け。都市部と地方の差が地図で見えます。
- 各都道府県ページでは、進学率を県の参考値として掲載しています(例:進学率最高で大学も最多の東京都・進学率が全国最少の鹿児島県・大学が2校の佐賀県)。
まとめ
- 大学進学率は、最高の東京都で72.9%、最低の鹿児島県で38.4%、その差は34.5ポイント・約1.9倍。上位は都市部、下位は地方に偏る。
- 背景にあるのが大学の一極集中。全国813校のうち東京だけで145校(約18%)、三大都市圏8都府県で過半(50.7%)。佐賀・島根は2校しかない。
- 大学が乏しい地方では、進学はしばしば「上京」を意味し、費用と距離が壁になる。進学率の差は学力ではなく、大学へのアクセスと経済的負担を映す面が大きい。
- 進学率は学力や進学の質を表さない。定義(現役・出身高校所在地別)も踏まえ、一つの目安として読む。
出典:文部科学省「令和6年度 学校基本調査(確定値)」より、現役・出身高校所在地別の大学(学部)進学率、および大学数(本部所在地基準・国公私立計)を都道府県別に整理(machiscope)。全国値58.3%は現役・出身高校所在地別で、報道等のヘッドライン値(過年度卒を含む59.1%)とは定義が異なります。指標の粒度・ライセンスはデータ出典・方法論に記載しています。数値は参考情報であり、正確性・完全性を保証するものではありません。