「地価が上がっている」のは都市だけ——全国1,737市区町村を並べて分かった、5年で6割が下落・2,900倍の格差
「都心のマンションが高騰」「地価が34年ぶりの上昇率」——不動産の値上がりを伝えるニュースをよく目にします。では、地価は全国どこでも上がっているのでしょうか。この記事では、住宅地の公示地価(国土交通省・地価公示、令和8年)を全国1,737市区町村で並べ、その高低と5年間の動きを読み解きます。第1弾からのデータの読み物と同じく、順位そのものより、数字が何を語り、何を語らないかを確かめる回です。
最高と最低で約2,900倍
まず水準から。住宅地の公示地価(1㎡あたり)は、最低が1,390円(北海道音威子府村)、最高が407万円(東京都千代田区)。その差は約2,900倍です。全市区町村の中央値は2万1,400円/㎡でした。
上位は、東京がまるごと占めています。地価トップ20はすべて東京23区で、千代田区407万・港区241万・中央区191万・渋谷区178万——都心の住宅地は、1㎡が普通車1台ぶんの価格帯です。一方、下位に並ぶのは北海道の町村や離島の村で、1㎡あたり数千円。同じ「住宅地」でも、桁が3つも4つも違います。
上がっているのは都市、6割超は下がっている
ここが今回いちばんの勘どころです。「地価が上がっている」は、全国の話ではありません。この5年間(公示地価ベース)の変化を市区町村ごとに見ると、こうなります。
| 5年間の動き | 市区町村数 | 割合 |
|---|---|---|
| 上昇 | 541 | 31% |
| 横ばい | 86 | 5% |
| 下落 | 1,101 | 64% |
上がったのは3割、下がったのは6割超。全市区町村の5年変化の中央値はマイナス2.6%でした。つまり「平均的な街」ではむしろ地価は下がっている。それでもニュースが「上昇」を伝えるのは、上がっている都市の地価が桁違いに高く、全国の平均を引き上げるからです。どの単位で見るかで、景色はまるで変わります。
上昇した541市区町村の内訳を見ても、東京51・愛知43・福岡41・埼玉32・沖縄32・北海道30——大都市圏と、福岡・札幌・沖縄といった一部の成長エリアに集中しています。逆に、四国の徳島県・愛媛県では、5年間で地価が上がった市区町村が一つもありませんでした。値上がりは全国に薄く広がっているのではなく、限られた場所に偏っている、というのが実態です。
この数字が語らないもの
ここがいつもいちばん大事なところです。地価は街の相場を測る便利な指標に見えますが、次のこととは別物です。
- 公示地価は、実際の売買価格ではありません。公示地価は、国が選んだ「標準地」を年に1回、不動産鑑定士が評価した価格です。実際に取引が成立する値段(成約価格)とは別もので、machiscopeでは実取引の成約価格も別のデータとして併せて掲載しています。相場をつかむには、両方を見るのが安全です。
- 多くの街では、地点が数か所しかありません。公示地価の調査地点は都市に厚く、地方に薄い。今回のデータでも、住宅地の公示地点が3か所以下の自治体が過半を占めます(52%)。1〜2地点の価格を、その街全体の相場と読むのは危うい。
- 高い=良い、ではありません。地価の高さは、その場所に需要が集中していることの裏返しで、住みやすさや暮らしの満足度をそのまま表すわけではありません。高い街は家賃も物価も高い。
- 過去の動きは、将来を保証しません。5年で上がった街がこの先も上がるとは限らず、下がった街が下がり続けるとも限りません。金利や人口動態で流れは変わります。
- 断面です。ここに載せたのは令和8年の公示地価と、そこから見た5年変化。値は毎年更新されます。
machiscopeで見る
同じデータを、次の形でそのまま確認できます。
- 地価が上昇している街ランキング:住宅地の前年比で全国の市区町村を並べた一覧。
- 地価が安い街ランキング:住宅地の公示地価が低い順の一覧。
- 不動産ナビ(公示地価と実取引):公示地価だけでなく、実際の成約価格(マンション・戸建て)まで水準と前年比で横断できます。
- 各市区町村のカルテでは、公示地価と推移を掲載しています(例:東京都千代田区・北海道音威子府村)。
まとめ
- 住宅地の公示地価は、最低1,390円/㎡(北海道音威子府村)〜最高407万円/㎡(東京都千代田区)で、差は約2,900倍。上位20はすべて東京23区。中央値は2万1,400円/㎡。
- この5年で地価が上がったのは31%、下がったのは64%(中央値マイナス2.6%)。「地価上昇」は大都市圏と一部の成長エリアに偏り、徳島・愛媛では上昇した市区町村がゼロだった。
- 公示地価は実際の売買価格とは別もので、多くの街は調査地点が数か所しかない(52%が3地点以下)。1〜2地点の値を街全体と読みすぎない。
- 地価の高さは需要の集中の裏返しで、住みやすさそのものではない。一つの相場の目安として、実取引価格と合わせて読む。
出典:国土数値情報「地価公示データ L01」(令和8年・住宅地)/国土交通省。市区町村別の集計・5年変化・対比はmachiscopeによるもの。公示地価は国が選定した標準地の鑑定評価額であり、実際の成約価格とは異なります。調査地点数は都市部に厚く地方に薄いため、地点の少ない自治体の値は参考程度にご覧ください。指標の粒度・ライセンスはデータ出典・方法論に記載しています。数値は参考情報であり、正確性・完全性を保証するものではありません。将来の地価を保証するものではありません。